左右差に向き合う指のエピテーゼ製作 ― 自然な仕上がりを目指す職人の工夫と想い

この記事でわかること

・指のエピテーゼ製作がなぜ難しいのか
・左右差がある場合に求められる考え方と工夫
・乳房再建手術の現場から得たヒント
・エピテーゼ製作が「見た目」以上に持つ意味

なぜこの取り組みをしているのか

現在、指のエピテーゼの製作に取り組んでいます。
その中でも今回は、特に難しさを感じているケースです。

左右の指の太さに差があるため、
健側(正常な側)の指をそのままコピーするだけでは、
自然な仕上がりにはなりません。

単なる「形の再現」ではなく、
手全体のバランスや動きの中で違和感が出ないこと。
その方の日常に自然に溶け込むこと。

それを実現するために、
なぜこの調整が必要なのか、
なぜ時間をかけてでも向き合うのか。

その理由が、この取り組みの根底にあります。

具体的な内容・仕組み

左右差がある場合のエピテーゼ製作では、
単純なコピーは行いません。

・指一本だけを見ない
・手全体のバランスを見る
・動いたときの印象を想像する
・使う場面(仕事・日常動作)を考慮する

こうした要素を重ねながら、
ミリ単位、場合によってはそれ以下の感覚で調整を行います。

数値だけでは測れない「自然さ」は、
経験と感覚、そして想像力の積み重ねによって形にしていきます。

実際のお声・反応

先日、乳房再建術の手術現場に立ち会う機会がありました。

医師の先生方が、
患者さんの体型、皮膚の状態、左右のバランスを細かく確認しながら、
術後の姿を頭の中で明確にイメージして手術を進めていく姿。

その様子を拝見し、
「ただ同じものを作るのではない」
「どんな状態でも“自然に見える形”を探る」
という姿勢は、私たちのエピテーゼ製作と深く通じていると感じました。

医療とものづくり、分野は違っても
目指す先は同じなのだと、強く実感した瞬間でした。

どんな人に知ってほしいか

・指や身体の一部を失い、見た目や日常生活に不安を感じている方
・再建やエピテーゼを「見た目だけのもの」と思っている方
・医療・福祉・支援の現場で関わる方

エピテーゼは、
見た目を整えるためだけのものではありません。

社会復帰、自己肯定感の回復、
日常生活の安心感へとつながる、大切なプロセスです。

お問い合わせ・支援のご案内

エピテーゼサロン綴では、
一人ひとりの身体や生活背景に寄り添った製作を大切にしています。

「こんなケースでも相談できる?」
「まず話を聞いてほしい」

そういった段階からでも構いません。
どうぞお気軽にご相談ください。

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すぎちゃん

杉本 雄二(すぎもと・ゆうじ)プロフィール
エピテーゼサロン綴 代表。
歯科技工士/日本歯科技工学会 評議員/技工士教育・研究開発にも精力的に取り組む。
1984年に富山歯科総合学院 歯科技工士科を卒業後、石川県立中央病院 歯科口腔外科に勤務。
1994年に歯科技工所「デントニウム」を開設、2003年には法人化。
以来、歯科技工だけでなく、再建医療・審美分野への応用技術に取り組み、
人工乳房・耳・指などのエピテーゼ製作やカスタム手術ガイドの開発も行っている。
■ 主な役職歴
• 2014〜2020年:石川県歯科技工士会 会長
• 2022年〜:石川県歯科技工士連盟 会長
• 日本歯科技工学会 評議員
• 第41回日本歯科技工学会 準備委員長
• 2016〜2018年:日本歯科技工士連盟 理事
■ 海外発表・国際活動
• 2013年:国際歯科技工学会(韓国)にて発表
• 2017年:ベトナム国際セミナー「歯科医療に貢献する歯科技工」参加
• 2018年:アメリカ審美学会(AEED)にて発表
• 2019年:台湾・台南歯科医師会総会に招待参加
• 2025年:国際歯科技工学会 ポスター発表(優秀賞受賞)
■ 特許・共同研究実績
• 2011年:歯科用インプラントに用いるジグ(特許取得)
• 2022年:指エピテーゼの関節機能に関する共同研究(国立石川高専)
• 2024年:人工乳房の開発(金沢工業大学と共同研究)
• 2024年:口唇口蓋裂患者向け、ホッツ床とエピテーゼ一体型新技術の開発
________________________________________
「医療技術と美しさの両立」を目指して、患者一人ひとりのQOL向上に寄与する技工を日々探求中。
現在は、技工と形成外科・再建医療の融合分野にも取り組みながら、
後進育成や地域の医療連携にも力を注いでいる。

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