「失ったものを、日常に戻す」ためのもの ―エピテーゼという選択肢―
手や指、耳、鼻、乳房など、からだの一部を失ったり、形が変わってしまったとき。
多くの方がまず思い浮かべるのは「治療」「手術」「リハビリ」かもしれません。けれど、日常に戻るうえで大きいのは見た目だけではなく、人目が気にならないこと、外出や仕事をためらわずにできること“自分らしさ”が保てることだったりします。
そのときに知っておいてほしい選択肢のひとつが、エピテーゼです。
エピテーゼとは、失われた部位を補うための外付けの人工補綴(ほてつ)で、シリコーンなどを用いて皮膚の質感や色味を再現し、「身につけて生活する」ことを前提に作られます。
「義手・義足」とは何が違うの?と聞かれることがあります。
ざっくり言えば、義手・義足が“動作や機能の補助”に強いのに対し、エピテーゼは“見た目と生活の安心”に寄り添ったものでエピテーゼ自体に機能はありません。(もちろん部位や目的によって重る部分もあります)。
そして何より大切なのはエピテーゼは治療の代わりではなく、生活の選択肢として検討できるという点です。
「自然に見える」って、結局どういうこと?
エピテーゼの相談でいちばん多い悩みが
「自然に見えるようにしたい」
「バレないようにしたい」
というものです。
でも、ここで最初にお伝えしたいのは“左右を完全に同じにする=自然”とは限らないということです。
人のからだはそもそも左右対称ではありません。
指の太さ、爪のカーブ、関節のしわ、肌の色の濃淡、血色、日焼け、利き手による角質の違い。
むしろ左右を“完璧に一致”させようとすると、かえって「作り物っぽさ」が出ることがあります。
私が考える「自然」は、ひとことで言うと “全体が調和していること” だと思います。
近くで見たときの精密さも大事ですが、日常の距離感(会話距離、レジでの受け渡し、職場での動作)で見たときに、違和感が前に出ないこと。
そのためには、細部の再現だけでなくバランスが必要になります。
自然さを左右する「5つの判断基準」
ここで、わかりやすいように“自然に見える”を5つに分解してみます。
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形の輪郭(全体のシルエット)
まず目に入るのは輪郭です。厚み・丸み・先端の細さなど、遠目でも違和感が出やすいポイント。 -
太さと長さのバランス
とくに指はここが重要です。長さだけ合わせても、太さが違うと目立ちます。逆も同じです。 -
肌の色味(ベース色+血色)
肌色は「ベージュ一色」ではありません。血色、くすみ、透け感が混ざります。季節や体調でも変わります。 -
質感(光り方・マット感・しわの入り方)
ツヤが強すぎると人工物っぽくなり、マットすぎても不自然です。光の反射は“自然さ”を強く左右します。 -
境目の見え方(装着部の処理)
境目は「消す」より「目立たせないこと」が大切です。服装・動作・視線の入り方まで含めて考えます。
この5つを、生活シーンに合わせて優先順位をつけていき
お客様と一緒に現実的な「正解」を探していきます。
「正解」はひとつじゃない。だからこそ、最初に決めるべきこと
エピテーゼの正解は、「最も精巧なもの」だけでは決まりません。
たとえば——
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仕事で手元を見られる機会が多い → 近距離の自然さを優先
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外出時の視線がつらい → 遠目の調和を優先
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装着に時間をかけたくない → 着け外しのしやすさを優先
つまり、正解は「あなたの生活に合うこと」です。
製作者側の視点で言えば、最初に大切なのは “何を大事にして暮らしたいか” を一緒に言語化することだと感じています。
後悔しないための「作り手の選び方」
初めてだと、何を基準に選べばいいのか分からないですよね。
私は次の3点を意識して選んでいただきたいです。
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症例(実例)を見せてもらえるか
仕上がりの方向性(リアル寄り/自然寄り/扱いやすさ重視など)が分かります。 -
生活シーンを聞いてくれるか
見た目だけでなく、仕事・趣味・服装・利き手・手元作業などを確認してくれるか。
寄り添ってくれているか。 -
修理や調整の考え方が明確か
エピテーゼは“作って終わり”ではありません。経年変化や生活による消耗を前提に、調整や修理ができるかが重要です。
相談のハードルを下げるために:まずは「流れ」を知ってください
「興味はあるけれど、いきなり行くのは不安」
「遠方だから、通えるか心配」
そう感じる方も少なくありません。
最初の一歩を踏み出しやすいように、相談の形と流れを分かりやすくまとめてみました。
当サロンについて(場所)
当サロンは石川県金沢市にある医療系ビルの一室で営業しております。
県内の方はもちろん、近隣県や遠方からもご相談いただいています。
大学病院とも連携しています
当サロンは、必要に応じて大学病院とも連携しながらご相談を進めています。
治療や手術、創部の状態(傷の落ち着き具合)などで「今相談しても大丈夫?」と不安な場合でも、状況に合わせて相談のタイミングや進め方を一緒に整理できます。医療の判断が必要な事項は医療機関の方針を尊重し、生活面の選択肢として無理のない形でご提案させていただいています。
遠方の方・まずは不安な方へ(電話/Zoom相談)
遠方で移動が大変な場合や、来店前に不安を解消したい場合は電話相談やZoomで状態を見ながらのご相談も可能です。
「自分の場合は作れる?」「どんな仕上がりを目指せそう?」「通う回数は?」など、事前に整理してから来店できるので、心理的な負担がぐっと減ります。
ご来店いただいてからの流れ(予約制)
当サロンは予約制となっております。
お電話や公式LINEにてご予約、お問合せをお願い致します。
来店後の大まかな流れは次の通りです。
1回目:カウンセリング(初日)
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お悩み・生活シーン(仕事、外出、趣味など)の確認
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目指したい自然さの方向性(何を優先するか)
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製作の流れのご説明
「自然に見える」の定義を一緒にすり合わせる大切な回ですが
ここで無理に決める必要はありません。
お話しを伺いながら、エピテーゼでできることできないこと
具体的な金額や来店回数などもご説明いたします。
2回目:製作開始/型どり/ワックス(ろう)確認(※部位・状態により前後します)2時間程度
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まずは製作部位の型どり(形を取る工程)を行います。
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その後、完成のイメージを確認するためにワックス試適(=ろうで作った“仮の形”を当てて見る工程)を行います。
ここで長さや曲がり具合、自然に見える形を確認していきます。
※この工程は部位や状態によって、ワックス試適が次回以降になることもあります。
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手の指や足の指など健側(反対側の同じ部位)がある場合は、比較しながら形を作りやすいため、当日にワックス試適まで進められるケースが多いです。
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反対に、耳・鼻・乳房など“左右で形が異なり一から形を作る必要がある部位”は、ワックスの形を製作するのに時間を要するため、ワックス確認が次回になる場合があります。
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また、健側がない(比較できる反対側がない)ケースでは、写真・既存の印象・ご本人の希望をもとに形の基準を作るため、ワックスでの確認回数が増えることがあります。
ワックスとは?
ワックスは、最終素材であるシリコンに入る前に使う、やわらかい“ろう(蝋)”の材料です。
いきなりシリコンで作るのではなく、まずワックスで「輪郭」「厚み」「長さ」「指先の丸み」などを作り、実際に当ててみて——
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生活の距離感で見たときに不自然じゃないか
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角度によって違和感が出ないか
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太さや長さが“浮いて”見えないか
を確認しながら調整します。
この段階で、いわゆる“違和感が出やすい部分(輪郭・太さ・長さ)”を整えておくことで、次の工程(シリコン試適や着色)がスムーズになり、仕上がりの自然さにもつながります
3回目:シリコン試適 → 問題なければ着色(2〜3時間程度)
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シリコン試適で装着感や見え方を最終確認
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問題がなければ、そのまま着色へ(目安:2〜3時間程度)
色味は、照明や肌の血色で印象が変わるため、丁寧に合わせていきます。
完成・お渡し
完成後のお渡し方法は、
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ご来店でのお渡し
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郵送でのお渡し
から選べます。遠方の方でも無理なく受け取れるようにしています。
最後に:知らなかった人へ伝えたいこと
エピテーゼは、誰かに勧められて初めて知る方も多いものです。
そして、知ったとしても「作ろう」とはじめの一歩を踏み出すのに時間がかかることが多いと感じています。
これは、不安や金額的な問題も含めて
贅沢に感じる部分もあるのかもしれません。
でも、これは“贅沢”ではなく、日常を取り戻すための道具と考えてみてほしいです。
人目が気になって避けていた場所に行けるようになったり、自分に自信が戻ったり、写真に写ることをためらわなくなったり。そういう変化は、治療とは別のかたちで生活を支えます。
もし今、少しでも
「外出がしんどい」
「視線が怖い」
「隠すことに疲れた」
と感じているなら、エピテーゼは“考えてもいい選択肢”です。
まずは、いきなり作る必要はありません。
電話やZoomで、状態を見ながら相談することもできます。
「自分の場合は何ができて、何が難しいのか」
「どんな仕上がりを目指せるのか」
それを知るだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
「話しを聞いてほしい」その気持ちに寄り添わせてください。
何か気になることがありましたら下記よりお問合せください。
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