義指・人工指・その他のエピテーゼ

皮膚の色を再現する難しさ|自然に見えるエピテーゼ製作へのこだわり

皮膚の色を再現する難しさ|自然に見えるエピテーゼを目指して

エピテーゼを製作する中で、日々難しさを感じていることのひとつに「皮膚の色の再現」があります。

エピテーゼは、失われた部分や生まれつき形が異なる部分を補うためのものですが、ただ形を作ればよいというものではありません。

実際に装着したときに、できるだけ自然に見えること。
鏡を見たときに、少しでも安心できること。
人と会うときに、気持ちが少し軽くなること。

そのためには、形だけでなく「色」がとても大切になります。

今回の記事では、エピテーゼ製作における皮膚の色の再現の難しさ、私たちが日々大切にしていること、そして自然に見えるエピテーゼを目指す想いについてお伝えします。

この記事でわかること

  • エピテーゼ製作で皮膚の色合わせが難しい理由
  • 人の肌の色が一色ではないこと
  • 自然に見える色を再現するために大切なこと
  • 光や生活環境によって色の見え方が変わること
  • エピテーゼを通して私たちが大切にしている想い

皮膚の色は「肌色」だけでは表せない

人の皮膚の色は、決して一色ではありません。

「肌色」と一言で表現してしまうこともありますが、実際には、赤み、黄み、青み、茶色、血色、透明感、影の色など、いくつもの色が重なり合っています。

同じお顔や手の中でも、場所によって色は違います。

頬のように少し赤みを感じる部分。
耳や指先のように血色が見えやすい部分。
影になりやすく、少し暗く見える部分。
皮膚が薄く、透明感を感じる部分。

その一つひとつが重なって、その方らしい自然な肌の色になっています。

エピテーゼを製作する際には、この微妙な色の違いを見極めながら、シリコーンに色を混ぜていきます。

「もう少し赤みが必要なのか」
「黄色を足した方が自然に見えるのか」
「茶色を入れると濃くなりすぎないか」
「透明感を出すにはどうすればよいか」

毎回、目の前の色と向き合いながら、慎重に調整を重ねています。

ほんの少しの違いで、印象は大きく変わります

色合わせの難しさは、ほんの少しの違いで印象が大きく変わるところにあります。

赤みが少し強いだけで、浮いて見えてしまうことがあります。
黄みが少し足りないだけで、まわりの皮膚となじみにくくなることがあります。
濃さが少し違うだけで、自然に見えたり、逆に違和感が出たりします。

エピテーゼは、装着する方の身体の一部のように見えることが大切です。

そのため、色合わせでは「近い色」を作るだけではなく、その方の皮膚になじむ色を探していく必要があります。

これは、決して簡単な作業ではありません。

何度も確認し、少しずつ色を足し、時には戻りながら、自然に見える色を目指していきます。

製作する側としては、とても悩む工程でもありますが、同時にエピテーゼの仕上がりを大きく左右する、とても大切な工程だと感じています。

光の当たり方でも、色の見え方は変わります

皮膚の色合わせが難しい理由のひとつに、光の影響があります。

室内で見たときには自然に見えていても、外の自然光の下では少し明るく見えたり、逆に暗く見えたりすることがあります。

蛍光灯の下、LED照明の下、窓際の自然光、屋外の光。
それぞれの環境で、色の印象は変わります。

お客さまは、エピテーゼをサロンの中だけで使うわけではありません。

ご自宅で過ごすとき。
外出するとき。
お仕事や学校へ行くとき。
人と会うとき。
写真に写るとき。

さまざまな場面で装着されます。

だからこそ、私たちはできるだけ実際の生活場面を想像しながら、色の確認を行うことを大切にしています。

一つの照明の下だけで判断するのではなく、いくつかの環境で見え方を確認しながら、より自然に近づけていきます。

色を感覚だけに頼らないために

色合わせには、経験や感覚も大切です。

しかし、感覚だけに頼ってしまうと、毎回の製作にばらつきが出てしまうことがあります。

そのため、日頃から色見本を作り、どの色をどの割合で混ぜると、どのような色になるのかを記録していくことも大切だと感じています。

赤みを足した場合。
黄みを足した場合。
茶色を少し加えた場合。
透明感を出したい場合。

一つひとつの経験を記録し、次の製作に活かしていく。

そうした積み重ねが、より安定した色合わせにつながっていくのだと思います。

また、絵画や色彩学の知識も、エピテーゼ製作に役立つと感じています。

補色の関係、明度、彩度、色相。
色の仕組みを理解することで、「何となく混ぜる」のではなく、「なぜこの色を足すのか」を考えながら調整できるようになります。

エピテーゼ製作は、医療的な支援に近い側面を持ちながら、同時にとても繊細なものづくりでもあります。

技術と感覚、知識と経験。
その両方が必要になる仕事だと感じています。

デジタル技術だけでは再現できない、人の目と手の感覚

最近では、カメラや測色機などを活用して、皮膚の色を数値化する方法もあります。

色をデータとして確認できることは、とても大きな助けになります。

客観的な数値を取り入れることで、色合わせの精度を高めたり、記録として残したりすることができます。

一方で、機械だけで完全に皮膚の色を再現できるわけではありません。

皮膚には、数字だけでは表せない血色や透明感、質感があります。

また、見る角度や光の当たり方によっても印象が変わります。

だからこそ、デジタル技術を活用しながらも、最終的には人の目で確認し、手で調整していくことが大切だと感じています。

機械の力と、職人の経験。
その両方を組み合わせながら、より自然に見えるエピテーゼを目指しています。

自然に見えることは、心の安心にもつながります

エピテーゼは、単に欠損部分を補うためだけのものではありません。

その方が人と会うとき、外に出るとき、鏡を見るときに、少しでも安心できるようにするためのものです。

「人の目が気になる」
「外出するのに勇気がいる」
「鏡を見るたびに気持ちが沈んでしまう」

そのようなお気持ちを抱えている方もおられます。

見た目の悩みは、周りからはわかりにくいことがあります。

けれど、ご本人にとっては日々の生活に関わる、とても大きなことです。

だからこそ、私たちは「少しでも自然に見えること」にこだわりたいと思っています。

自然に見えることで、すべての悩みがなくなるわけではないかもしれません。

それでも、鏡を見たときに少し気持ちが軽くなる。
髪型や服装を少し楽しめるようになる。
人と会うことへの不安が少し減る。

そのような小さな変化が、日々の安心につながることがあるのではないかと思います。

一人ひとりに合わせて、丁寧に向き合うこと

皮膚の色は、一人ひとり違います。

同じ「耳エピテーゼ」「指エピテーゼ」「人工乳房」であっても、必要な色や仕上がりは同じではありません。

年齢、肌質、血色、生活環境、装着する場所。
そして、ご本人がどのように見えたいか。

それぞれに合わせて、丁寧に確認しながら進めていくことが大切です。

私たちは、エピテーゼを製作する中で、お客さまの不安や迷いに触れることがあります。

「本当に自然に見えるのだろうか」
「自分に合う色になるのだろうか」
「相談だけでもしてよいのだろうか」

そう感じている方もおられるかもしれません。

そのような段階でも、どうか一人で抱え込まずにご相談いただけたらと思います。

作るかどうかを決めていない段階でも大丈夫です。

まずは、どのような方法があるのか、どのような流れで製作するのか、色合わせはどのように行うのかを知っていただくことから始めていただけます。

難しいからこそ、学び続けたい

皮膚の色を再現することは、とても難しい課題です。

毎回同じように見えても、実際には一人ひとり違います。

悩みながら色を作り、確認し、試作し、時には思うようにいかないこともあります。

それでも、その積み重ねの中にしか技術の向上はないと感じています。

観察すること。
記録すること。
試作すること。
失敗から学ぶこと。
お客さまの声を聞くこと。

その一つひとつが、次の製作につながっていきます。

難しいからこそ、学び続ける価値があります。

そして、その学びがいつか、お客さまの自然な笑顔や、少し安心した表情につながるのだと思います。

エピテーゼのご相談について

エピテーゼサロン綴では、人工乳房、シリコーンパッド、耳エピテーゼ、指エピテーゼ、鼻エピテーゼなど、見た目やからだの変化に関するご相談を受け付けています。

「まだ作るか決めていない」
「自分の場合は製作できるのか知りたい」
「色合わせがどのように行われるのか聞いてみたい」
「まずは相談だけしてみたい」

そのような段階でも大丈夫です。

エピテーゼは、見た目を補うだけでなく、その方が少しでも安心して日々を過ごすための選択肢のひとつです。

私たちはこれからも、シリコーンによる皮膚の色の再現という難しい課題に向き合いながら、より自然で、その人らしいエピテーゼを製作できるよう努力していきたいと思います。

気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

ご相談は、公式LINEまたはお電話よりお問い合わせください。
公式LINE:
写真を送って相談したい方や、まずは文章で気軽に聞いてみたい方におすすめです。


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お電話:076-287-3182
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すぎちゃん

杉本 雄二(すぎもと・ゆうじ)プロフィール
エピテーゼサロン綴 代表。
歯科技工士/日本歯科技工学会 評議員/技工士教育・研究開発にも精力的に取り組む。
1984年に富山歯科総合学院 歯科技工士科を卒業後、石川県立中央病院 歯科口腔外科に勤務。
1994年に歯科技工所「デントニウム」を開設、2003年には法人化。
以来、歯科技工だけでなく、再建医療・審美分野への応用技術に取り組み、
人工乳房・耳・指などのエピテーゼ製作やカスタム手術ガイドの開発も行っている。
■ 主な役職歴
• 2014〜2020年:石川県歯科技工士会 会長
• 2022年〜:石川県歯科技工士連盟 会長
• 日本歯科技工学会 評議員
• 第41回日本歯科技工学会 準備委員長
• 2016〜2018年:日本歯科技工士連盟 理事
■ 海外発表・国際活動
• 2013年:国際歯科技工学会(韓国)にて発表
• 2017年:ベトナム国際セミナー「歯科医療に貢献する歯科技工」参加
• 2018年:アメリカ審美学会(AEED)にて発表
• 2019年:台湾・台南歯科医師会総会に招待参加
• 2025年:国際歯科技工学会 ポスター発表(優秀賞受賞)
■ 特許・共同研究実績
• 2011年:歯科用インプラントに用いるジグ(特許取得)
• 2022年:指エピテーゼの関節機能に関する共同研究(国立石川高専)
• 2024年:人工乳房の開発(金沢工業大学と共同研究)
• 2024年:口唇口蓋裂患者向け、ホッツ床とエピテーゼ一体型新技術の開発
________________________________________
「医療技術と美しさの両立」を目指して、患者一人ひとりのQOL向上に寄与する技工を日々探求中。
現在は、技工と形成外科・再建医療の融合分野にも取り組みながら、
後進育成や地域の医療連携にも力を注いでいる。

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