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富山歯科総合学院スキルアップセミナー参加記|IOS勢力図の変化とAIへの向き合い方

 

週末に富山歯科総合学院で開催されたスキルアップセミナーに参加してきました。
今回の講演は、株式会社 医科歯科技研の秦社長、松尾副社長による
「IDS2025からみる業界の変化とAIへの向き合い方」というテーマ。

とても内容の濃いお話で、歯科技工業界がいまどこに向かっているのか、そして私たちはこれから何を考え、どう備えていかなければならないのかを改めて考えさせられました。

世界最大のデンタルショー「IDS」のスケール

まず印象に残ったのは、IDSの規模の大きさです。
IDSは、2年に1度ドイツのケルンで開催される世界最大のデンタルショーで、2025年の出展社数は2010社にものぼるそうです。

日本のデンタルショーも年々規模は大きくなっていますが、IDSは「世界の歯科業界の流れが一気に見える場」という表現がまさにしっくりきました。
技術の方向性、メーカーの力関係、次に標準になりそうな考え方。そういったものが“空気”として伝わってくる場所なのだと思います。

地方で仕事をしていると、どうしても情報が入ってくるスピードは遅くなりがちです。
しかし、こうした場で何が起きているかを知ることは、地方であっても決して無関係ではありません。むしろ、早い段階で潮目を知っておくことが、次の一手を考える上で大きなヒントになるのだと感じました。

業界の勢力図が大きく変わっている

従来はヨーロッパの老舗メーカーが強い存在感を持っていたそうですが、近年は韓国製や中国製のIOS(口腔内スキャナー)が急速に増えてきており、市場の勢力図が大きく変わっているとのことでした。

特に驚いたのは、ドイツの老舗メーカーが中国メーカーの製品をOEMとして展示しているという話です。
以前では考えられなかったようなことが、いま実際に起こっている。
それだけ、ものづくりや技術開発の主役が大きく動いているのだと感じました。

さらに、大手メーカーも頭打ちの傾向があり、中国勢の著しい台頭によって
「どのメーカーのIOSが一番精度が良いか」
といった比較そのものが、以前ほど意味を持たなくなってきている、という話も印象的でした。

確かに、良い製品が次々に出てくる時代です。
ひとつひとつの機械の細かな比較に時間をかけるより“それをどう現場の流れに組み込むか”の方が、結果として価値になる。ここはまさに現場感のある視点だと思いました。

これからは「デジタルワークフロー全体」を設計する時代

今回の講演で特に印象的だったのは
「個々の機械の性能比較より、デジタルワークフロー全体の最適化が大事」
という考え方です。

どんなに優れたスキャナーやソフトがあっても
その後の設計・加工・仕上げ・情報共有がうまくつながっていなければ、現場では活きません。

つまり
・どの機械を使うか
・どういう順番でデータを流すか
・誰がどの役割を担うか
・どこで確認し、どこで修正するか
こういった“全体の流れ”を設計する力が、これからますます重要になるということです。

これは歯科技工だけでなく、私たちが取り組んでいるエピテーゼ製作サージカルガイドの設計にも通じる考え方だと思いました。
単発の技術ではなく、「一連の流れが安定して回る」こと。ここが価値になる時代になっているのだと感じます。

デジタル時代の「技術」とは何か

もうひとつ、とても考えさせられたのが
デジタル時代における「技術」の定義が変わってきているという話でした。

これまで「技術」と言えば、手作業の上手さや、経験による勘、手の感覚といったものが中心だったと思います。
もちろん、それは今でもとても大切です。

ただこれからは
・PCのスペックを理解すること
・ソフトの特徴を知ること
・デザインのルールを把握すること
・加工機を正しく動かすこと
・デジタルデータを正確に扱うこと
こういった力も、同じように“技術”なのだというお話がありました。

これは本当にその通りだと思いました。
「手が器用」だけでも足りない。
でも逆に「デジタルだけ分かる」でも足りない。
両方をつなげて、現場で“再現性”を作れる人が必要になる。今後はそこが強みになるのだと思います。

自社に合った「レシピ」を持つことの大切さ

講演の中で出てきた「レシピ」という言葉も、とてもわかりやすく印象に残りました。

どんなに優れた機械や材料があっても
自社の設備やスタッフのスキル、仕事の流れに合っていなければ、うまく機能しません。

だからこそ
自分たちの環境に合った最適なレシピを作ること
そしてそれを
組織の中で共有し、標準化していくこと
が成功の鍵になる、というお話でした。

確かに、機械任せにするのではなく
「うちではこのやり方が一番安定する」
「この順番ならミスが少ない」
といった形で、自分たちのやり方を言語化して持つことが大事だと感じます。

個人の経験だけに頼らず、チームの財産として残していく。
これが、これからの歯科技工に必要な考え方なのだと思いました。

学び続けることが一番大切

今回のセミナーを通して、改めて感じたのは
「やはり学び続けることが大事だ」ということです。

業界の流れはどんどん変わります。
昨日まで当たり前だったことが、今日はもう古くなっていることもある。

だからこそ、外に出て、話を聞いて、考えて、自分の仕事に置き換えてみる。
その繰り返しが大切なのだと思います。

私自身、歯科技工だけでなく、エピテーゼやサージカルガイドといった分野にも関わっていますが、どの分野でも同じように感じます。
新しい技術をただ追いかけるのではなく、自分たちの現場でどう活かすかを考えること。
それが一番重要なのだと思います。

今回の学びを、これからの仕事に少しずつ落とし込んでいきたいと思います。

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すぎちゃん

杉本 雄二(すぎもと・ゆうじ)プロフィール
エピテーゼサロン綴 代表。
歯科技工士/日本歯科技工学会 評議員/技工士教育・研究開発にも精力的に取り組む。
1984年に富山歯科総合学院 歯科技工士科を卒業後、石川県立中央病院 歯科口腔外科に勤務。
1994年に歯科技工所「デントニウム」を開設、2003年には法人化。
以来、歯科技工だけでなく、再建医療・審美分野への応用技術に取り組み、
人工乳房・耳・指などのエピテーゼ製作やカスタム手術ガイドの開発も行っている。
■ 主な役職歴
• 2014〜2020年:石川県歯科技工士会 会長
• 2022年〜:石川県歯科技工士連盟 会長
• 日本歯科技工学会 評議員
• 第41回日本歯科技工学会 準備委員長
• 2016〜2018年:日本歯科技工士連盟 理事
■ 海外発表・国際活動
• 2013年:国際歯科技工学会(韓国)にて発表
• 2017年:ベトナム国際セミナー「歯科医療に貢献する歯科技工」参加
• 2018年:アメリカ審美学会(AEED)にて発表
• 2019年:台湾・台南歯科医師会総会に招待参加
• 2025年:国際歯科技工学会 ポスター発表(優秀賞受賞)
■ 特許・共同研究実績
• 2011年:歯科用インプラントに用いるジグ(特許取得)
• 2022年:指エピテーゼの関節機能に関する共同研究(国立石川高専)
• 2024年:人工乳房の開発(金沢工業大学と共同研究)
• 2024年:口唇口蓋裂患者向け、ホッツ床とエピテーゼ一体型新技術の開発
________________________________________
「医療技術と美しさの両立」を目指して、患者一人ひとりのQOL向上に寄与する技工を日々探求中。
現在は、技工と形成外科・再建医療の融合分野にも取り組みながら、
後進育成や地域の医療連携にも力を注いでいる。

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