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日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会に参加|形成外科と乳腺外科の融合から学んだこと

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会に参加して 〜「知らない」が、次の学びにつながる〜

10月8日・9日の2日間、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会に参加してきました。

朝早くから夕方遅くまで、講演がびっしりと組まれた2日間。

正直なところ、終わった頃には少し疲れもありました。

しかし、それ以上に、

「まだまだ知らないことがたくさんある」

ということを、改めて実感した学会でもありました。

知らないことが多いというのは、少し不安になることでもあります。

一方で、見方を変えれば、これから学べることが、それだけたくさん残っているということでもあります。

大学院での学びを始めたばかりの今だからこそ、今回の学会は、自分の研究やこれからの仕事を考えるうえで、とても良い刺激になりました。

この記事でお伝えしたいこと

  • 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会に参加して感じたこと
  • 「形成外科と乳腺外科の融合」という考え方について
  • エピテーゼ製作と乳房再建・治療とのつながり
  • 大学院で研究を始めた今、改めて感じた基礎医学の大切さ
  • 「知らないこと」が、学びの入口になるということ
  • これから研究と仕事をどう結びつけていきたいか

今回のテーマは「形成外科と乳腺外科の融合」

今回の学会で、特に印象に残ったテーマの一つが、「形成外科と乳腺外科の融合」です。

乳がんの治療では、当然ながら、がんを取り除くこと、命を守ることが最も重要です。

しかし、それだけではありません。

治療後の乳房の形をどう保つか。

再建によって、どのように整容性を高めるか。

手術後の生活を、どう支えていくか。

患者さんが、治療後もその人らしい生活を続けていくためには、こうした視点もとても大切です。

乳腺外科と形成外科、それぞれの専門性を生かしながら治療を考える。

その考え方は、私がこれまでエピテーゼや人工乳房の製作を通して向き合ってきた、「治療後の外見や生活をどう支えるか」というテーマとも、深くつながっているように感じました。

今まで「外から見ていた乳房」を、今度は内側から学ぶ

これまで私は、エピテーゼや人工乳房の製作を通して、乳房の形態を外側から捉える仕事をしてきました。

左右のバランス。

胸壁とのつながり。

乳房のふくらみ。

下着を着用したときの自然さ。

服を着たときのシルエット。

こうしたことを考えながら、日々ものづくりをしています。

つまり、これまでは主に「身体の表面に現れる形」を見てきたことになります。

しかし、今回の学会で多くの講演を聴いていると、乳房の形を本当に理解するためには、その表面だけではなく、内側にある構造についても知る必要があるのだと改めて感じました。

皮膚。

脂肪。

乳腺。

筋肉。

血管。

神経。

それぞれがどのような位置関係にあり、どのように影響し合っているのか。

その基礎を理解していなければ、手術方法や再建方法についても、表面的な理解で終わってしまいます。

講演を聴くたびに増えていく「?」

今回の学会では、手術方法の違いや再建方法、乳房の組織構造、血流、神経、術後の形態変化など、非常に多くの内容が取り上げられていました。

講演を聴きながら、

「なるほど、そういうことなのか」

と納得することもありました。

しかし、その一方で、

「この専門用語は何だろう?」

「なぜ、この術式を選択するのだろう?」

「この血流は、乳房の形態にどう関係しているのだろう?」

と、疑問も次々と出てきます。

話についていくだけで精いっぱい、という場面もありました。

そこでふと、講演を聴きながら思いました。

「さて、いったい何から勉強を始めればいいのだろう?」

大学院に入学したばかりで、これから本格的に研究を進めていこうとしているところですが、学べば学ぶほど、自分に足りない知識の多さに気づかされます。

やはり、まずは「解剖学」からでしょうか

今回、改めて必要だと感じたのが、解剖学の基礎です。

乳房がどのような組織で構成されているのか。

皮膚や脂肪、乳腺、筋肉、血管、神経がどのように関係しているのか。

手術によって、どの構造が残り、どの構造が変化するのか。

それを理解して初めて、術後の乳房形態や再建についても、より深く考えられるようになるのだと思います。

これまで私は、目に見える形を捉え、それをどう再現するかを考えてきました。

しかし、これから研究を進めるのであれば、

「なぜ、その形になるのか」

というところまで考えていく必要があります。

そのためには、やはり身体の構造を知ることが出発点になるのでしょう。

そう考えると、勉強しなければならないことは本当に山ほどあります。

解剖学。

生理学。

手術方法。

再建。

画像。

血流。

組織。

研究方法。

統計。

書き出していくと、少し気が遠くなりそうです(笑)。

それでも「勉強が嫌だ」とは思わない

不思議なことに、知らないことがあまりにも多いのに、今のところ「勉強が嫌だ」とは思いません。

むしろ、

「これを知れば、今まで見ていたものが違って見えるかもしれない」

という感覚の方が強いです。

学会で新しいことを知る。

分からない言葉を調べる。

少し理解できる。

すると、今度はその先に新しい疑問が出てくる。

その繰り返しが、今はとても面白く感じます。

若い頃であれば、勉強というのは、試験に合格するため、単位を取るためという意味合いが大きかったように思います。

しかし今は違います。

これまで仕事をしてきた中で、実際に見てきたものがあります。

患者さんから聞いた言葉があります。

製作の中で悩んできたことがあります。

その経験があるからこそ、

「もっと知りたい」

と思えるのだと思います。

「知りたいことがあるから学ぶ」

以前のブログでも書きましたが、今の自分にとって勉強する理由は、とてもシンプルです。

「知りたいことがあるから学ぶ」

それに尽きるのかもしれません。

仕事を長く続けていると、経験は増えていきます。

しかし、経験が増えるほど、逆に分からないことも増えていきます。

「こういう場合はこうなることが多い」

という経験則はあっても、

「なぜそうなるのか」

と聞かれたときに、医学的・科学的に説明できるとは限りません。

だからこそ、今まで経験として積み重ねてきたことを、大学院では研究という形で、もう一度見直してみたいと思っています。

エピテーゼ製作と医学的知識をどうつなげるか

私はこれまで、歯科技工士としてのものづくりの経験を生かしながら、エピテーゼや人工乳房の製作に取り組んできました。

さらに近年では、3Dスキャナーや3Dプリンターなど、デジタル技術も活用しています。

身体の形をスキャンする。

デジタルデータとして形態を確認する。

左右差を比較する。

必要な形を設計する。

そして実際の製作につなげる。

こうした技術には、大きな可能性があると感じています。

一方で、技術だけが進んでも、身体そのものへの理解が浅ければ、本当に良いものにはつながらないと思います。

例えば、術後にどのような形態変化が起こるのか。

なぜ左右差が生じるのか。

どの部分を基準に形を考えるべきなのか。

そうしたことを理解するためには、医学的な知識が必要です。

これまで培ってきた「ものづくりの技術」と、これから大学院で学んでいく「医学的・研究的な視点」。

この二つをうまく結びつけることができれば、今までとは違う形で、患者さんの支援につながるものが生まれるのではないかと考えています。

3D技術も「使うこと」が目的ではない

3Dスキャナーや3Dプリンターは、非常に便利な技術です。

しかし、私は、デジタル技術そのものを使うことが目的ではないと思っています。

大切なのは、

「その技術を使って、何を解決したいのか」

ということです。

技術が新しいから使う。

3Dだから良い。

それだけでは、意味がありません。

患者さんにとって負担が少なくなる。

より正確に形を捉えられる。

製作工程を改善できる。

医療者と製作者の間で情報を共有しやすくなる。

研究によって、その有用性を検証できる。

そうした形で初めて、技術が価値につながるのだと思います。

研究テーマの「入口」が少し見えてきた

今回の学会では、これから大学院で研究を進めていくうえで、多くのヒントをいただきました。

まだ研究テーマがすべて明確に決まったわけではありません。

むしろ今は、知れば知るほど、

「これも調べたい」

「こちらも関係しているのではないか」

と、興味の範囲が広がっている段階です。

ただ、広がったままでは研究にはなりません。

その中から、

何を知りたいのか。

何を明らかにしたいのか。

それが患者さんや医療の現場に、どう役立つのか。

一つひとつ整理していく必要があります。

そのためにも、まずは基礎を身につける。

そして現場で自分が感じてきた疑問を、研究として問い直してみる。

今は、そんな段階なのだと思います。

学会に参加すると、自分の現在地が見えてくる

学会に参加すると、新しい知識を得ることができます。

しかし、それと同時に、自分が何を知らないのかもよく分かります。

今回もそうでした。

講演の内容がよく分かる部分もありました。

何となく理解できる部分もありました。

そして、まったく分からない部分もありました。

以前の自分なら、分からないことが多いと少し落ち込んでいたかもしれません。

しかし今は、少し見方が変わりました。

分からないことに気づけたということは、次に何を学べばいいのかが見えたということ。

そう考えられるようになりました。

「知らない」は、恥ずかしいことではない

長く仕事をしていると、どうしても「知っていて当然」と思われる場面も増えてきます。

社長という立場になれば、なおさらかもしれません。

しかし、分からないことを分からないままにしておく方が問題です。

知らなければ、調べればいい。

分からなければ、教えてもらえばいい。

理解できなければ、もう一度基礎から勉強すればいい。

その姿勢は、何歳になっても変わらないのだと思います。

むしろ、年齢を重ねた今だからこそ、素直に

「これは分からない」

「これは教えてほしい」

と言えることが、大切なのかもしれません。

大学院に入ったことで、学会の見え方も変わりました

これまでも学会には何度も参加してきました。

しかし、大学院に入学してから参加してみると、少し見え方が変わってきたように感じます。

以前であれば、

「新しい治療法なんだな」

「こんな技術があるんだな」

と聞いていた内容も、今は、

「これはどのような方法で検証されたのだろう?」

「どんなデータを集めているのだろう?」

「比較するなら、何を指標にするのだろう?」

と、少し研究の視点で考えるようになってきました。

まだまだ入口に立ったばかりですが、こうした視点の変化も、大学院へ進んだ意味の一つなのかもしれません。

仕事と大学院、両立はこれからが本番です

大学院での生活は、まだ始まったばかりです。

会社の仕事があります。

エピテーゼや人工乳房の製作があります。

学会や出張もあります。

そこに、授業や研究が加わります。

これから時間のやりくりに苦労することも、きっとあるでしょう。

勉強が思うように進まないこともあると思います。

それでも、焦らず一つひとつ積み重ねていきたいと思っています。

一日で全部理解しようとしない。

一冊の本を一度で覚えようとしない。

まずは一つ知る。

そして、また一つ知る。

その繰り返しです。

知らないことが多い。それは、これからが面白いということ

今回の学会に参加して、一番強く感じたのは、

「知らないことが多いということは、それだけこれから学べることがある」

ということでした。

何でも分かっているのであれば、新しい発見はありません。

分からないことがあるから調べる。

疑問があるから研究する。

そして、その積み重ねが、新しいものづくりや支援につながっていく。

今はまだ、自分の目の前に大きな山があるようにも感じます。

しかし、その山を一気に登ろうとする必要はありません。

まずは足元の一歩から。

そう考えると、少し気持ちも楽になります。

おわりに 〜さて、まずは解剖学の本から〜

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会に参加した2日間。

朝から夕方まで講演を聴き、少し疲れましたが、それ以上に、多くの刺激と課題を持ち帰ることができました。

乳腺外科と形成外科が、それぞれの専門性を生かしながら、乳がん治療後の乳房形態や患者さんの生活まで考えていく。

その考え方に触れることで、私自身がこれから大学院で何を学び、研究していくのかについても、少しずつ考えが深まってきました。

これまで培ってきたエピテーゼ製作の技術。

3Dスキャナーや3Dプリンターなどのデジタル技術。

そして、これから身につけていく医学的な知識と研究の視点。

これらを一つずつ結びつけながら、最終的には患者さんや医療現場の役に立つ形にしていきたいと思っています。

そのためには、まだまだ勉強が必要です。

まずは、やはり解剖学でしょうか。

本棚にある解剖学の本を開いて、乳房の構造を一つずつ確認するところから始めてみようと思います。

分からない言葉が出てきたら、また調べる。

そして、その先でまた新しい疑問が出てくる。

きっと、その繰り返しなのでしょう。

学びに終わりはありませんね。

でも今は、その終わりのない学びを、少し楽しんでみたいと思っています。

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すぎちゃん

杉本 雄二(すぎもと・ゆうじ)プロフィール
エピテーゼサロン綴 代表。
歯科技工士/日本歯科技工学会 評議員/技工士教育・研究開発にも精力的に取り組む。
1984年に富山歯科総合学院 歯科技工士科を卒業後、石川県立中央病院 歯科口腔外科に勤務。
1994年に歯科技工所「デントニウム」を開設、2003年には法人化。
以来、歯科技工だけでなく、再建医療・審美分野への応用技術に取り組み、
人工乳房・耳・指などのエピテーゼ製作やカスタム手術ガイドの開発も行っている。
■ 主な役職歴
• 2014〜2020年:石川県歯科技工士会 会長
• 2022年〜:石川県歯科技工士連盟 会長
• 日本歯科技工学会 評議員
• 第41回日本歯科技工学会 準備委員長
• 2016〜2018年:日本歯科技工士連盟 理事
■ 海外発表・国際活動
• 2013年:国際歯科技工学会(韓国)にて発表
• 2017年:ベトナム国際セミナー「歯科医療に貢献する歯科技工」参加
• 2018年:アメリカ審美学会(AEED)にて発表
• 2019年:台湾・台南歯科医師会総会に招待参加
• 2025年:国際歯科技工学会 ポスター発表(優秀賞受賞)
■ 特許・共同研究実績
• 2011年:歯科用インプラントに用いるジグ(特許取得)
• 2022年:指エピテーゼの関節機能に関する共同研究(国立石川高専)
• 2024年:人工乳房の開発(金沢工業大学と共同研究)
• 2024年:口唇口蓋裂患者向け、ホッツ床とエピテーゼ一体型新技術の開発
________________________________________
「医療技術と美しさの両立」を目指して、患者一人ひとりのQOL向上に寄与する技工を日々探求中。
現在は、技工と形成外科・再建医療の融合分野にも取り組みながら、
後進育成や地域の医療連携にも力を注いでいる。

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