おしらせサポート・支援(tsuzuru-絆の会)

tsuzuru-絆の会の総会を迎えて|エピテーゼ支援と継続的なつながりへの思い

「tsuzuru-絆の会」総会を迎えて 〜理事長としての思い〜

「tsuzuru-絆の会」の総会を迎えます。

理事長としてこの日を迎えられることを大変嬉しく思うとともに、日頃から会の活動を支えてくださっている会員の皆さま、関係者の皆さま、そして私たちの取り組みに心を寄せてくださっているすべての皆さまに、改めて心より感謝申し上げます。

総会は、この一年の活動や会計を確認し、これからの方針について話し合う大切な機会です。
しかし私にとっては、単に資料を確認し、議案を審議するだけの日ではありません。

これまでの歩みを振り返り、私たちが何を大切にして活動してきたのか、そしてこれから誰に、どのような支援を届けていきたいのかを、会員の皆さまと改めて共有する大切な節目でもあります。

この記事でお伝えしたいこと

  • 「tsuzuru-絆の会」が大切にしている思い
  • エピテーゼを必要とする方への支援について
  • 製作だけではなく、情報や相談の場を届けることの大切さ
  • 総会を迎えた理事長としての思い
  • これから目指していきたい会の姿

「tsuzuru-絆の会」が目指していること

「tsuzuru-絆の会」は、病気や事故、先天的な理由などによって身体の一部を失われた方や、外見・身体の変化に悩まれている方、そのご家族や支援者に、必要な情報や支援を届けることを目的として活動しています。

耳や鼻、指などのエピテーゼを必要とする方。
乳がんの手術後に、人工乳房やシリコーンパッドなどの選択肢を探している方。
治療後の外見の変化について、誰に相談したらよいのか分からず、不安を抱えている方。

抱えている悩みや置かれている状況は、一人ひとり異なります。

同じ病気や治療を経験した方であっても、感じ方や必要とする支援は同じではありません。
だからこそ私たちは、最初から答えを決めつけるのではなく、まずはその方のお話を伺い、どのような情報や選択肢が必要なのかを一緒に考えることを大切にしています。

同じ経験だから分かること、違う立場だから支えられること

同じ経験をした人だからこそ、言葉にしなくても分かり合えることがあります。

治療への不安。
外見が変わったことへの戸惑い。
周囲の目が気になる気持ち。
家族や職場の人に、どのように説明したらよいのか分からない悩み。

同じような経験をした方から、
「私も同じことで悩みました」
「こういう方法もありますよ」
と声をかけてもらうだけで、気持ちが少し軽くなることがあります。

一方で、同じ経験をしていなくても、話を遮らずに聴いてくれる人、本人の意思を尊重しながら寄り添ってくれる人がいることで、安心できることもあります。

当事者、ご家族、医療関係者、製作者、支援者、地域の皆さま。
それぞれ立場は異なりますが、その違いを越えてつながり、できることを持ち寄ることで、支援の輪はより大きくなっていくのだと思います。

「tsuzuru」と「絆」に込めた思い

会の名前にある「tsuzuru」には、一人ひとりの思いや経験、そして人と人とのつながりを、少しずつ紡ぎ、つないでいくという思いを込めています。

一つの出会いが、次の出会いにつながる。
一人の体験が、同じ悩みを抱える方の安心につながる。
一つの小さな支援が、誰かが次の一歩を踏み出すきっかけになる。

そうした一つひとつを丁寧に綴りながら、必要とされる方へつないでいきたいと考えています。

そして「絆」という言葉には、人とのつながりが新たな力となり、孤立や不安を少しでも和らげ、前へ進む支えになってほしいという願いを込めています。

支援は、一方的に与えるものではありません。
人と人が出会い、互いの経験や考えを知ることで、支える側も多くのことを学ばせていただきます。

「tsuzuru-絆の会」という名前には、そうした双方向のつながりを大切にしたいという思いがあります。

エピテーゼは、作って終わりではありません

私は日頃、歯科技工士として、エピテーゼや人工乳房などの製作に携わっています。

エピテーゼとは、病気や事故、先天的な理由などによって失われた耳・鼻・指などの身体の一部を、シリコーンなどの素材で補う人工補綴物です。

形を整えること。
肌の色や質感に近づけること。
装着した際に、できるだけ自然に見えるよう工夫すること。

こうした製作技術はもちろん重要です。

しかし、長くこの仕事に携わる中で、ものを作ることだけでは本当の支援にはならないと感じるようになりました。

完成したエピテーゼをお渡しするまでには、多くの不安があります。

「自分の場合は、どのように作るのだろう」
「どのくらい自然に見えるのだろう」
「自分でうまく装着できるだろうか」
「子どもの成長や製品の劣化で、作り直しが必要になったらどうしよう」
「費用の負担を続けられるだろうか」

こうした不安に対して、製品だけをお渡しして終わるのではなく、相談できる場所や継続的な情報、作り直しの際の支援についても考えていく必要があります。

一度では終わらない支援を目指して

特に、成長期のお子さまが使用するエピテーゼは、身体の成長に合わせて新たな製作が必要になることがあります。

また、成人の方であっても、エピテーゼは永久に使えるものではありません。
長く使用する中で、色や質感が変化したり、破損や劣化が生じたりすることもあります。

そのたびに新たな製作費用が必要となれば、ご本人やご家族にとって大きな負担となります。

「tsuzuru-絆の会」では、こうした二回目以降の製作負担を少しでも軽くできるよう、支援の仕組みづくりに取り組んでいます。

一度製作したら終わりではなく、必要なときに再び相談できること。
成長や生活の変化に合わせて、継続的につながっていけること。

それが、私たちが目指している支援の一つです。

「知らなかった」で選択肢を失わないために

エピテーゼや人工乳房、アピアランスケアという言葉は、少しずつ知られるようになってきました。

しかし、実際にはまだ、必要としている方に十分な情報が届いているとは言えません。

治療を受けたあとに初めて、外見の変化や生活上の困りごとに直面する方もいらっしゃいます。
そのときになってから、

「こんな選択肢があるとは知らなかった」
「もっと早く知りたかった」
「どこへ相談すればよいのか分からなかった」

という声が生まれることがあります。

必要なものを選ぶかどうかは、ご本人が決めることです。
しかし、選択肢そのものを知らなければ、選ぶこともできません。

だからこそ私たちは、ホームページやブログ、会報誌、相談会、体験会、医療機関への情報提供などを通じて、まずは知っていただくための活動を続けています。

交流し、安心して話せる場をつくる

情報を届けることと同じくらい大切なのが、安心して話せる場をつくることです。

悩みを抱えていても、初対面の人にすぐ話せるとは限りません。
特に外見や身体に関する悩みは、とても個人的で、言葉にすること自体が負担になることもあります。

無理に話す必要はありません。
誰かの話を聞くだけでもよい。
製品を見たり触れたりするだけでもよい。
必要になったときに、また相談できると知っていただくだけでもよい。

その方のペースで参加できることが大切です。

「tsuzuru-絆の会」が、何かを強く求められる場所ではなく、必要なときに気軽に立ち寄れ、少し安心して帰ることができる場所でありたいと思っています。

この一年の活動を、次の支援へつなげるために

今日の総会では、この一年に行ってきた活動を振り返ります。

相談会や交流会、体験会、子どもたちを対象としたワークショップ、啓発活動、学校や医療機関への情報提供など、一つひとつの活動には、それぞれ目的があります。

開催すること自体が目的ではありません。

その活動を通して、誰に情報が届いたのか。
どのような反応があったのか。
本当に必要とされる支援につながったのか。
改善すべき点はなかったか。

そうしたことを丁寧に振り返り、次の活動へつなげていくことが大切です。

うまくいったことだけではなく、思うように届かなかったことや、今後見直す必要があることについても、会員の皆さまと共有し、より良い方法を考えていきたいと思います。

総会は、皆さんと一緒に未来を考える時間

総会では、活動報告や決算報告、今後の事業計画や予算について審議します。

数字や資料を確認することは、組織を適切に運営していくために欠かせません。
同時に、その数字の向こう側にある活動の意味や、支援を必要とされている方々の姿を忘れてはならないと思っています。

限られた時間や予算の中で、何を優先するのか。
どの活動を継続し、どの活動を見直すのか。
新たにどのような連携を進めていくのか。

理事長一人で決めるのではなく、会員の皆さまの意見を伺いながら、会としての方向を一緒に考えていくことが大切です。

今日の総会が、これまでを確認するだけではなく、これからの「tsuzuru-絆の会」を皆さんと一緒に描く時間になればと思っています。

理事長として大切にしたいこと

理事長という立場には、会の運営や活動を進める責任があります。

しかし、理事長だからといって、一人ですべてができるわけではありません。

会員の皆さま、理事の皆さま、活動に協力してくださる関係者の皆さま、情報を届けてくださる医療・福祉・教育関係の皆さま、そして応援してくださる地域の皆さま。

多くの方の支えがあって、会の活動は成り立っています。

だからこそ私は、皆さまの声をよく聴くことを大切にしたいと思っています。

良い意見だけではなく、厳しいご意見や疑問も受け止めながら、会の目的から外れていないか、一部の人だけの活動になっていないかを確認し続けなければなりません。

必要とされる方のために活動する会であること。
安心して関われる会であること。
誠実で、分かりやすい運営を続けること。

その基本を忘れず、責任を持って取り組んでいきたいと思います。

一人ではないと思えるつながりを

外見や身体の変化に関する悩みは、周囲から見えにくいことがあります。

見た目には元気に過ごしているように見えても、心の中では大きな不安を抱えていることがあります。
相談したいと思っても、誰に話せばよいのか分からないこともあります。

そのようなとき、

「話を聴いてくれる人がいる」
「同じような悩みを持つ人がいる」
「必要になったら相談できる場所がある」

と知るだけでも、支えになることがあります。

私たちは、すべての悩みを解決できるわけではありません。
それでも、一人で抱え込まずに済むための小さなつながりをつくることはできます。

そのつながりを丁寧に綴り、次の方へ手渡していくことが、「tsuzuru-絆の会」の役割だと考えています。

おわりに 〜これからも希望を紡ぐ会として〜

今日の総会を迎えられたことに、改めて感謝申し上げます。

会員の皆さま、関係者の皆さま、日頃より活動を応援してくださっている皆さま、本当にありがとうございます。

これからも「tsuzuru-絆の会」が、人と人をつなぎ、必要な情報や支援を届け、誰かが次の一歩を踏み出すきっかけをつくれる存在であり続けたいと思っています。

大きなことを一度に実現することは難しくても、一つの相談、一つの出会い、一つの活動を大切に積み重ねることで、できることは少しずつ広がっていくはずです。

理事長として、これからも会員の皆さまと共に学び、考え、行動しながら、より安心して参加していただける会づくりを進めてまいります。

「一人ではない」と感じられるつながりを。
必要な方へ届く支援を。
そして、新たな希望を少しずつ紡いでいけるように。

今後とも、「tsuzuru-絆の会」をどうぞよろしくお願い申し上げます。

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すぎちゃん

杉本 雄二(すぎもと・ゆうじ)プロフィール
エピテーゼサロン綴 代表。
歯科技工士/日本歯科技工学会 評議員/技工士教育・研究開発にも精力的に取り組む。
1984年に富山歯科総合学院 歯科技工士科を卒業後、石川県立中央病院 歯科口腔外科に勤務。
1994年に歯科技工所「デントニウム」を開設、2003年には法人化。
以来、歯科技工だけでなく、再建医療・審美分野への応用技術に取り組み、
人工乳房・耳・指などのエピテーゼ製作やカスタム手術ガイドの開発も行っている。
■ 主な役職歴
• 2014〜2020年:石川県歯科技工士会 会長
• 2022年〜:石川県歯科技工士連盟 会長
• 日本歯科技工学会 評議員
• 第41回日本歯科技工学会 準備委員長
• 2016〜2018年:日本歯科技工士連盟 理事
■ 海外発表・国際活動
• 2013年:国際歯科技工学会(韓国)にて発表
• 2017年:ベトナム国際セミナー「歯科医療に貢献する歯科技工」参加
• 2018年:アメリカ審美学会(AEED)にて発表
• 2019年:台湾・台南歯科医師会総会に招待参加
• 2025年:国際歯科技工学会 ポスター発表(優秀賞受賞)
■ 特許・共同研究実績
• 2011年:歯科用インプラントに用いるジグ(特許取得)
• 2022年:指エピテーゼの関節機能に関する共同研究(国立石川高専)
• 2024年:人工乳房の開発(金沢工業大学と共同研究)
• 2024年:口唇口蓋裂患者向け、ホッツ床とエピテーゼ一体型新技術の開発
________________________________________
「医療技術と美しさの両立」を目指して、患者一人ひとりのQOL向上に寄与する技工を日々探求中。
現在は、技工と形成外科・再建医療の融合分野にも取り組みながら、
後進育成や地域の医療連携にも力を注いでいる。

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