
スキャニングによる新たなアプローチ|印象採得が難しい症例でのエピテーゼ製作
昨日、金沢大学附属病院よりご依頼をいただき、通常の印象採得が難しい部位のスキャニングに伺ってきました。
歯科や補綴の現場では、シリコンなどを用いた印象採得、いわゆる型取りによって形態を記録することが一般的です。
しかし、部位や状態によっては、この方法そのものが難しいケースもあります。
患者さんの負担や安全性を考えると、従来の方法を無理に行うことが最善とは限りません。
今回の症例では、印象採得が難しい部位に対して、デジタルスキャナーを用いた形態の取得を行いました。
そしてこれから製作していくのは、欠損部を塞ぐための「皮弁」の代替としてのエピテーゼです。
今回は、こうした現場の中で感じたことや、デジタル技術の可能性について書いてみたいと思います。
この記事でわかること
・通常の印象採得が難しい症例に対するスキャニング活用について
・エピテーゼ製作におけるデジタル技術の可能性
・皮弁の代替としてのエピテーゼの意味
・デジタルとアナログを組み合わせる大切さ
・医療現場で大切にしたい「患者さんにとって何が最善か」という視点
通常の印象採得が難しい症例では、別の方法が必要になることがある
歯科や補綴の現場では、形態を記録するために印象採得を行うことが基本になります。
型取りによって情報を得ることで、その後の補綴物や装置の製作へとつなげていきます。
しかし、実際の臨床では、すべての症例に同じ方法がそのまま当てはまるわけではありません。
部位によっては印象材を使った採得そのものが難しいこともありますし、患者さんの状態によっては負担が大きくなってしまう場合もあります。
技術的には可能であっても、それが本当に患者さんにとってよい方法なのかは、別に考えなければならないことがあります。
安全性や負担、症例の条件を含めて考えたときに、従来のやり方にこだわらず、別の方法を選ぶ必要が出てくることもあります。
今回のケースは、まさにそのような症例でした。
通常の印象採得では対応が難しい部位に対して、スキャニングという方法で形態を取得することになりました。
今回はデジタルスキャナーを用いて形態を取得した
近年、歯科や医療の現場ではデジタル技術の進歩が著しく、さまざまな場面でその活用が広がっています。
今回あらためて感じたのは、こうした技術の進歩によって、これまで難しかったケースにも新しい対応が可能になってきているということです。
デジタルスキャナーを用いることで、従来の型取りでは難しかった部位でも、形態情報を取得できる可能性があります。
もちろん、すべてのケースで万能というわけではありませんが、選択肢が増えること自体がとても大きな意味を持つように思います。
従来の方法で難しいと感じたときに、別の方法で前に進める。
これは、製作する側にとっても大きな助けになりますし、何より患者さんにとっても負担を減らせる可能性があります。
デジタル技術は、単に新しいというだけではなく、患者さんにとってより無理の少ない方法につながるという点で、非常に価値があると感じました。
今回製作していくのは、皮弁の代替としてのエピテーゼ
そして今回製作していくのは、欠損部を塞ぐための「皮弁」の代替としてのエピテーゼです。
本来であれば、外科的な再建として皮弁を用いる方法もあります。
しかし、患者さんの全身状態や局所の条件、ご本人のご希望などによっては、その方法が難しい場合もあります。
そのようなときに、エピテーゼという選択肢があることは非常に大きな意味を持つと感じます。
外科的な方法だけではなく、別のかたちで補う方法があるということは、患者さんにとって大きな支えになることがあります。
エピテーゼは、単に欠損部を覆うものというだけではありません。
見た目を整えることはもちろんですが、それによって患者さんが人前に出やすくなったり、日常生活の中で感じる心理的な負担が軽くなったりすることもあります。
そう考えると、エピテーゼは補綴物という言葉だけでは言い表せない役割を持っているように思います。
エピテーゼ製作では、形態の再現性と自然さがとても重要になる
エピテーゼ製作では、形を作ることそのもの以上に、どれだけ自然に見えるか、どれだけ違和感を少なくできるかがとても重要になります。
欠損部を補うという目的だけであれば、単に形を埋めるだけでもよいように思えるかもしれません。
しかし実際には、それでは十分ではありません。
患者さんが日常生活の中で使いやすく、見た目にも無理がなく、その方にとって受け入れやすいものであることが大切です。
そのためには、形態の再現性が欠かせません。
どれだけ正確な情報を取得できるかが、その後の製作精度に大きく関わってきます。
今回のようにスキャニングを活用することで、より精度の高い形態取得につながるのであれば、それは製作の質にも良い影響を与えるはずです。
結果として、精度の高いエピテーゼ製作は、患者さんの安心感や生活の質の向上にもつながっていくのだと思います。
デジタルだけでも、アナログだけでもなく、両方を活かすことが大切
今回の症例を通してあらためて感じたのは、デジタルとアナログ、それぞれの良さを活かしていくことの大切さです。
デジタル技術には、形態を記録しやすいこと、データとして保存できること、再現性が高いことなど、多くの利点があります。
一方で、得られたデータをどう読み取り、どう形にしていくかという部分には、やはり人の判断や経験が必要です。
どの形が自然なのか。
どこに気をつけて作るべきか。
患者さんにとって無理のない仕上がりはどこか。
こうしたことは、単にデータがあるだけでは決まりません。
そこには、アナログの視点や、手で作る感覚、観察する力が必要になります。
つまり、デジタルだけで完結するわけではなく、アナログの力と組み合わせてこそ、本当に意味のあるものになるのだと思います。
最近は何でもデジタル化という流れがありますが、大事なのは「デジタルかアナログか」ではなく、症例にとって最適な方法を選ぶことなのだと感じます。
医療の現場で大切なのは、患者さんにとって何が最善かという視点
医療の現場では、常に新しい技術や考え方が取り入れられています。
それは、より精度の高い治療や、より負担の少ない方法を目指しているからだと思います。
けれど、新しい技術を使うこと自体が目的ではありません。
その技術を使うことで、患者さんにとってどんな意味があるのか。
負担を減らせるのか。
より自然な仕上がりにつながるのか。
安心して日常生活を送る助けになるのか。
そうしたことを考えながら選択していくことが何より大切なのだと思います。
今回のような症例に関わらせていただくと、あらためてそのことを実感します。
根底にあるのは、いつも「患者さんのために何が最善か」という視点です。
その視点があるからこそ、従来の方法にとらわれず、新しい方法を取り入れる意味が生まれるのだと思います。
これからも一つひとつの症例に丁寧に向き合っていきたい
今回のスキャニングによる対応を通して、デジタル技術の可能性を改めて感じると同時に、エピテーゼ製作という仕事の役割の大きさもあらためて感じました。
それは単に形を作る仕事ではなく、患者さんの生活や気持ちにも関わる仕事だからです。
だからこそ、一つひとつの症例に丁寧に向き合い、その方にとって少しでも良い形を探していくことが大切なのだと思います。
技術はこれからも進歩していくはずです。
その中で、これまで難しかったことが可能になっていく場面も増えていくでしょう。
今回のスキャニングも、そのひとつだと感じました。
これからも、デジタルとアナログの良さを活かしながら、症例ごとに最適な方法を考え、丁寧に取り組んでいきたいと思います。
そして何より、患者さんにとってよりよい選択肢を届けられるよう、できることを一つずつ積み重ねていきたいです。
おわりに
通常の印象採得が難しい症例に対して、スキャニングという新たなアプローチが可能になっていることは、これからのエピテーゼ製作にとって大きな意味を持つと感じます。
従来の方法にこだわるのではなく、患者さんの状態や負担を考えながら、その時に最適な方法を選ぶこと。
その中で、デジタル技術が新しい可能性を広げてくれることもあります。
一方で、最終的に必要なのは、データをどう読み取り、どう形にしていくかという人の力です。
だからこそ、デジタルとアナログの両方を大切にしながら、症例に向き合っていくことがこれからますます重要になるのだと思います。
今回の症例を通して、改めてそのことを強く感じました。
これからも、患者さんのために何が最善かを考えながら、目の前の仕事に丁寧に取り組んでいきたいと思います。
